研究課題
基盤研究(C)
1.対象と目的 大手耐火物製造業に昭和11年以降に入社した従業員195名を対象として、曝露粉じんの種類、曝露程度、喫煙習慣、その他の作業場における環境因子(特定化学物質)と呼吸器疾患の発生、じん肺の進展との関連を検証した。2.方法 当該対象者について、胸部X線写真を含むじん肺健康診断結果個人票、職歴票(職場名、職種名、作業期間、取扱い原材料などについて記載)の記録を統合し、電子化したデータベースを作成した。このデータベースを用いて、粉じんの種類・曝露状況と関連所見の発症・進展について検討した。3.結果(1)珪石を取扱った経歴があり、かつじん肺有所見の作業者について、珪石取扱期間と胸部X線写真所見の進展について検討を行った結果、有意な正の相関関係が認められた。(2)従事した作業の種類により、じん肺有所見者の発生数には差が認められた。それらは、成形、管理業務、粉砕の3種であった。このうち、成形については負の関係、管理業務、粉砕については正の関係が認められた。(3)喫煙習慣については、全体に高い喫煙率及び詳細な把握が困難であったことから、疾患発生との関連を十分検討するには至らなかった。4.考察 詳細な職歴を把握し、じん肺健診結果などの健康管理情報と統合することにより、取扱い物質、従事期間などの情報から、健康障害との関連を検討することができ、労働衛生管理において活用できることが示唆された。しかし、観察が数十年の長期間におよび、また情報量がかなり多くなることから、保存性、利便性、有益性の点から電子化を行っていくことは必須と思われた。今後もより効率的なシステムの構築を目指して改善していく必要がある。
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