介護モデルの構築に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670399
• 研究機関: 広島県立保険福祉大学
• 研究代表者: 住居 広士 広島県立保健福祉大学, 教授 (30249528)
• キーワード: 介護モデル / 介護保険 / 要介護認定 / 状態像の例 / 中間評価項目

研究概要

介護保険制度ではまず要介護認定等基準時間で一次判定されます。次いで介護保険審査会の二次判定で、最終的に状態像の例の選択を行い要介護度が決定されます。要介護認定では、コンピュータによる一次判定の結果を原案として、各要介護度別に示された各10例の「状態像の例」の中から、要介護者に最も近い例を選択することで最終判定されます。状態像の例を一次判定ソフトにより解析して、その要介護度判定の過程とそのロジックを検討した。【対象と方法】60例の状態像の例(介護認定運営要綱、平成11年9月)を対象とする。状態像の例に近い要介護度の分布と調査項目変更に伴う一次判定の影響度を検討した。方法としてA.I.mode対応一次判定プログラム(上州街道V2 for Windows)で分析した。要介護度を、マッチング(≧80%)、距離(<30)、中間評価項目得点距離(<40)の組合せと、要介護度判定に至るまでの基本調査項目の登場回数と中間評価項目得点の分布にて検討した。自立度の変化で要介護度の逆相関を起こす逆転現象を検出した。認定調査票の73項目の2項目以下の組合せの要介護度ごとの変動などを検討し解析した。【結果】マッチング、距離、中間評価ともに、要支援〜要介護2と要介護4〜5で類似の状態像の例が混在していた。要支援〜要介護1の分別が特に困難である。要介護度が重度への逆転現象は要介護4で一項目(8組)二項目(636組)、次いで要介護3で(一項目3組、二項目99組)を検出した。軽度へは、要介護1にて一項目(49組)二項目(4290組)、次いで要介護5で(一項目12組、二項目721組)を検出した。正方向変動は重度が要支援(28767組)要介護1(9059組)、軽度が要介護5(2994組)要介護4(2816組)あった。一次判定されろ樹形図の途上で、基本調査項目73項目のうち、「移乗」「両足のつく座位保持」「食事摂取」などの登場回数が多かった。まったく樹形図に関与していない項目は「寝返り」「起き上がり」「口腔清潔」「短期記憶」「問題行動のうち12項目」など多くあった。中間評価項目の分布では、第5群「身の回りの世話」と第3詳「複雑な動作」が、要介護度の軽度に多く関与し、逆に要介護度の重度では少なかった。第1群「麻痺・拘縮」と第4群「特別な介護」が要介護重度に多く関与し、要介護度軽度では少なかった。要介護度が重度になるにつれて、調査項目の登場回数は相対的に増加するも、中間評価項目の登場回数は一律となる傾向があった,【考察】上記の要介護認定の誤算の統計的原因として、(1)正規性のないデータを樹形モデルにかける(2)樹形モデルにかけた際に適切な剪定を行わなかった(3)順位変数である基本調査項目を名義変数として扱う(4)中間評価項目得点の誤導入などが指摘されており、要介護認定基準ならびに状態像の例の抜本的な見直しが必要である。要介護認定におけろ状態像の例は一次判定よりも重視されているが、本来の要介護度と状態像の例が合致していない。

研究成果

• [文献書誌] 佐々木哲二郎,住居広士 他: "介護の社会化を進める市民活動と医療ソーシャルワーカーの役割"介護福祉研究. 第8巻 第1号. 79-81 (2000)
• [文献書誌] 國定美香,住居広士 他: "介護のコミュニケーション術"介護福祉研究. 第8巻 第1号. 86-89 (2000)
• [文献書誌] 遠藤英俊,住居広士 他: "介護保険をめぐって"MEDICO. 第31巻 第3号. 115-124 (2000)
• [文献書誌] 住居広士,土肥信之: "介護モデルにおける要介護者等の介護度と家族介護評価"リハビリテーション医学. 第36巻 第11号. 831-831 (1999)
• [文献書誌] 住居広士: "要介護認定における状態像の例の要介護度の検証"リハビリテーション医学. 第37巻 第11号. 896-897 (2000)
• [文献書誌] 樋口美智子,住居広士 他: "地域福祉マンパワーの強化の困難要因について"介護福祉研究. 第7巻 第1号. 47-49 (1999)
• [文献書誌] 荒川義子,住居広士 監修: "介護保険時代の医療福祉総合ガイドブック"医学書院. 266 (2001)
• [文献書誌] 石田一紀,住居広士,橋本真也,加茂敬三: "要介護認定SOS-介護保険で泣かないために-"インデックス出版. 238 (2000)