研究課題/領域番号 |
11670401
|
研究機関 | (財)労働科学研究所 |
研究代表者 |
海老原 勇 財団法人労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (80124311)
|
研究分担者 |
川見 正機 財団法人労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (80153005)
|
キーワード | 石綿 / 胸膜肥厚斑 / 石綿肺 / 肺癌 / 悪性中皮腫 / 間質性肺炎 / cohort研究 / 肺内石綿量 |
研究概要 |
過去3年間の研究成果の概略は下記の通りである。 1.建設作業現場では、建築材料を切断、貼り付け等の作業をすることにより、建材に含まれている石綿を受けている。こうした作業における曝露濃度は間歇的であれ、しばしば極めて高い濃度を示している。また、既設の建物を解体する作業でも石綿の曝露はさけられない。さらに、直接作業者以外でも、間接的に曝露を受けることは避けられず、現場で作業するすべての建設作業職種に石綿暴露の可能性があることは否定できない。 2.首都圏の建設作業者を対象に胸膜肥厚斑の出現状況を検討した。その結果、1983-1987年の撮影で0.82%、1997年時点で1.62%、2001年で1.92%と増加の傾向が著明であった。また、職種別に見ても現業の全ての職種に胸膜肥厚斑の出現を認めた。 3.神奈川県建設国保組合と協同で潜在化している石綿肺の掘り起こしをすすめた結果、これまでに23例の重症の石綿肺が発見された。職種別では、石綿吹きつけ作業者2例、空調・保温工2例、築炉工5例など、高濃度の石綿暴露が明確な職種以外に、ハツリ・解体工3例、配管工2例、電工1例、エレベーター設置作業者1例のほか、大工7例であった。これらは、石綿肺として業務上疾患として認定された例である。 4.石綿関連肺癌として業務起因性が確認された肺癌は15例で、空調・保温工2例で、配管工2例、電工、左官、タイル、鉄骨、板金が各1例で、大工で6例が認定されるなど、全ての職種に及んでいる。 5.石綿関連の悪性中皮腫として業務起因性が確認された悪性中皮腫は7例で、大工3例、電工2例、空調・保温工1例、ブロック工1例であった。また、首都圏での建設労働者の悪性中皮腫の発生は、埼玉5例、神奈川4例、東京15例と、近年になって発生が急激に増加している。 6.神奈川県建設連合国保組合に加盟する建設作業者についてcohort mortality study(1992-1999)を実施したところ、以前より石綿暴露機会の多い空調、瓦、鳶、築炉作業者のみならず、鉄筋、鉄骨、左官、電工、配管、石工、塗装、雑役、サービスの職種で肺癌のリスクの増加が認められた。しかし、これまでのところ、大工での肺癌のリスクの増加は認められなかった。
|