1.建設作業現場では、石綿含有建材を切断・貼り付け等の作業にて、間欠的ではあれ高濃度の石綿の暴露を受けている。また、鉄工、電工、塗装工などは吹き付けられた石綿を掻き落としての作業などで石綿の暴露が避けられない。その他、多くの職種で石綿の直接ないし間接暴露を受けている。 2.首都圏の建設作業者を対象とした胸膜肥厚斑の有所見者率を経時的に検討したところ、1983-1987年時点で0.82%、1997年時点で1.62%、2001年1.99%と急激な増加が確認された。また、これまでに剖検することができた建設作業者55名(年齢61.6歳)のうち48名87.3%に胸膜肥厚斑を認めた。 3.定期健康診断で撮影した胸部レントゲン写真を利用して、石綿肺1型以上の者の有所見者率は6、268名中184名、2.94%であった。また、この間、首都圏の建設作業者の中から約180名の高度の石綿肺の例やびまん性胸膜肥厚、石綿胸膜炎を認め、業務上疾患としての手続きをした。その職種は解体作業者や空調保温作業者にとどまらず大工、左官、電工、配管などすべての職種に認められた。 4.石綿肺合併肺癌および石綿関連肺癌もすべての職種に広がりをみせている。この間、建設作業者の肺癌336例について検討したところ、石綿肺合併肺癌126例38%、胸部レントゲン背腹像で胸膜肥厚斑を認めた者96例29%、胸部CTで胸膜肥厚斑を認めた者233例69%と336名中253例(75%)が石綿関連肺癌としての所見を示していた。 5.悪性中皮腫47例を経験した。建設作業の全ての職種からの発症を認め、経年的に増加の傾向が著しい。 6.東京、神奈川、埼玉の建設国保に加入する建設作業者についてProportionate Mortality Studyを実施したところ、肺癌(PMR1.24)、中皮腫(PMR2.39)の有意の増加を認めた。
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