生活習慣病予防のため、個々人の遺伝背景からみた弱点を中心に予防する方法が実際的であると考え、高トリグリセリド(TG)血症をモデル系として、個々人にみあった予防法を確立することを目的とした。我々は原発性IV型高脂血症はリポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損ヘテロ接合体を病因遺伝子とし、ここにアルコール多飲等の環境因子が負荷して発症することを明らかにしてきた。高TG血症の個々人にみあった予防法を確立するためには、LPL遺伝子異常ヘテロ接合体の遺伝子診断を確実に、迅速に行うことが重要であると考えた。そこで、まず、高TG血症解析手法の中で、LPL蛋白測定法、肝性トリグリセリドリパーゼ蛋白測定法、直接塩基配列決定法、変異を見逃さないPCR増幅法、高TG血症時に出現する異常リポ蛋白検出法に関して、その技術開発、改良を行った。これらの成果をもとに、高TG血症において、個々人にみあった予防法確立を目指して、LPL遺伝子診断確実、迅速化のために、日本人におけるLPL遺伝子変異の集積を行った。その結果、低LPL値を示す高TG血症者から、Y61X、G188E、D204E、Int3-3'c(-6)t、G154V、G105R、Int8-5't(2)c変異が見いだされた。ミッセンス変異については原因変異であることをCOS-1細胞の発現系にて確認した。Int8-5't(2)cでは、エキソン8内のGT(LPL cDNAの1363番目のG)がスプライスに利用され、LPL cDNA1363-1496の欠損した異常mRNAが合成されていた。Int3-3'c(-6)tでは、異常スプライス産物が、in vivo、in vitroにおいて見いだされなかったので、これは真の原因変異と連鎖している多型と予想された。以上より、日本でのLPL遺伝子診断がより確実、迅速化され、高TG血症の診断と予防に貢献すると考えられる。
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