1.重症肺炎を起因したアデノウイルス7型の収集 1987年、大阪府下の1病院で、肺炎で死亡した3人の患者のうち2名の凍結保存肺組織からアデノウイルス7型を分離した。感染症サーベイランスが始まってからの日本でのアデノウイルス7型重症肺炎は、1996年の千葉での発生が最初と考えられていたが、実際はその9年前に存在していたことが明らかになった。また、その剖検肺切片を免疫組織化学および電顕観察で調べたところ、肺内にアデノウイルス抗原が検出でき、アデノウイルス7型肺炎は、アデノウイルスの直接の侵襲が原因であることを強く示唆した。さらに、ウイルスの遺伝子型は、当時に京都と奈良で分離されているAd7d(中国型)と同じであり、1996年以降全国的な流行をみせたAd7dvとは異なるものであった。なお、1987年当時、大阪では1株もアデノウイルス7型は分離されておらず、肺炎患者への感染経路は、全く不明である。それから11年後の1998年にも、同病院では死亡例を含む重症肺炎患者からアデノウイルス7型が分離されているが、この時の遺伝子型は、Ad7dvで、近年の大阪地域の流行株と同じであり、この時は、病院近辺から病院内に侵入したものと思われる。このように疫学的背景が全く異なるアデノウイルス7型肺炎の遺伝子型以外の差違について検討中である。 2.アデノウイルス7型感染症の早期診断 先の科学研究費補助金研究成果報告書で、我々は、アデノウイルスB群の早期診断のためのPCR法について報告した。今回はさらに、アデノウイルス3型、7型を区別するPCRについて検討した結果、分離ウイルスおよび臨床材料においても90%以上の検出率で診断可能となった(現在投稿中)。
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