1.アデノウイルス7型重症肺炎は、1998年夏以降発生がみられなくなった。筆者らは、重症呼吸器感染症についてその原因ウイルスの検索を継続的に行っており、1999〜2000年においては、RSウイルスによる重症例、およびインフルエンザウイルスとアデノウイルス3型との重複感染による死亡例を観察した。また、この期間中の冬期にインフルエンザウイルスによる脳炎・脳症が多数報告されたが、アデノウイルス7型の関与はみられなかった。 2.1987年に大阪府下の1病院で肺炎で死亡した3名の小児のうち2名の凍結保存剖検肺組織からアデノウイルス7型を分離した。この当時大阪ではアデノウイルス7型は全く流行しておらず、これらの小児への感染経路は全く不明である。また、この時分離されたウイルスの遺伝子型はAd7d(中国型)であり、1996〜1998年に分離された数多くのウイルスの遺伝子型(Ad7dv)とは異なっていた。以上のことは、アデノウイルス7型重症肺炎は突発的におこり、その病原性は遺伝子型で説明できない可能性が示された。 3.アデノウイルス核酸をPCR法を用いて検出し、早期診断する試みは、既に報告しているが、筆者らはアデノウイルス7型遺伝子を特異的に検出するPCR法を改良した。その結果、マルチプレックスプライマーを用いることによりアデノウイルス3型、7型、およびその他のB群アデノウイルスを区別して検出できるようになった。これらのPCRを実際の臨床検体に応用したところ、実用的であることがわかった。 4.抗原抗体反応を用いたアデノウイルス感染症の迅速診断のための市販キットについて検討してきている。免疫クロマトグラフィーの原理を利用したこのキットは、アデノウイルス感染症の迅速診断に非常に有用であると考えられた。
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