研究概要 |
我々は同一個体内での突然変異率を解析するためヒト正常細胞と腫瘍細胞(子宮癌細胞)を検索対象として、以下の検討を加えた。 1)検索を行った腫瘍細胞25例中11例で腫瘍細胞の(CAG)nの反復領域とアリル数の変動を確認した。 2)これらは全て正常細胞より繰り返し数を増加させる変化であった。 3)変異が確認された症例に関しては、全てより長いアリルが実際していた。 4)アンドロゲンリセプター(AR)(CAG)n部位では、他のSTR部位(0〜26%)よりも高い変異率を示した事より、この部位の変異が腫瘍の発癌過程に関与している可能性が示された。 5)各種の癌を対象として他のSTRを検索した報告では10〜20%に不安定性が認められている。(CAG)n部位の不安定性は比較的高いと考えられる。 6)STRを法医学的に検索に用いる場合には生殖細胞中の突然変異率のみならず体細胞中の変異率も考慮する必要がある。 7)性染色体上のマイクロサテライトDYS388,DYS390,DYS391,DYS392,DYS393でそれぞれ8、7、5、10、5のアリルの存在が確認された。 このうちDYS390を除く、DYS388、DYS391,DYS392,DYS393では特定の1つのアリルに頻度が偏在し、法医学応用は難しい事が明らかとなった。 DYS390では頻度の高いアリルで35%であるため日本人の個人識別には有用である。
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