HLA-DMB遺伝子(DMB*0101〜*0106)についてPCR-RFLP法により法医試料(血液・血痕・毛髪・唾液・脳硬膜・尿沈渣・人骨・歯牙)からのタイピングを試みた。DMB遺伝子の多型性が存在するエキソン3領域の増幅産物をApaL I、HinP1 I、Bsr Iの3種の制限酵素で切断してそのDNA断片長の違いをポリアクリルアミドゲル電気泳動法で識別した。PCR増幅産物は上記の制限酵素で切断でき8種の遺伝子型が検出された。試料全体(n=129)では約92%で型判定が可能であった。毛髪は83%と判定率が低かったが人骨・歯牙等は検査数が少なく今後の検討を要す。DMB*0106は今回の実験では検出されなかった。PCR-RFLP法では識別不能な3組のヘテロ型はアリルに特異的なプライマーを作成してPCR-SSP法で検査したところ判定が可能となった。今回検討したHLA-DMB型はアリルの出現頻度に偏りがあるが、再現性、判定の容易性等により他のHLA型と同様に個人識別等の法医実務に応用が可能と考えられた。 またアリルの特徴的な塩基配列部位に特異的なプライマーをデザインしPCR-SSP法によりタイピングを試みた。false-positiveやfalse-negativeについてはさらに試料数を増やして検討する予定である。 さらにPCR-SSCP法により各エキソン領域の多型性をスクリーニングした結果エキソン1には現在までに2種類の泳動像を確認した。その他のエキソンについても同様にスクリーニング後ダイレクトシークエンシングで塩基配列を決定する予定である。PCR-SSCP法は型の判別が困難であり、プライマーの設計並びに泳動法の検討など問題点が残っている。またダイレクトシークエンシングはtemplate DNA量が少なかったために充分な解析ができず今後検討を続けていく予定である。
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