脳疾患の法医病理診断-複合糖鎖・生理活性物質の利用-

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670413
• 研究機関: 滋賀医科大学
• 研究代表者: 西 克治 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60073681)
• 研究分担者: 牛山 郁子 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (70283562) ; 山本 好男 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (60111902) ; 西村 明儒 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (60283561)
• キーワード: 複合糖鎖 / 脳疾患 / 糖鎖沈着 / 組織化学

研究概要

今回の研究目的遂行のアプローチであった法医病理学的検討において、神経原線維変化や老人斑を鋭敏に検出する方法であるGallyal-Braak法に抗betaアミロイド抗体染色□(発色赤色)と抗GFAP抗体染色(発色茶色)の二重免疫組織化学的方法を加えた三重染色方法を開発し、神経神経原線維変化、老人斑とbetaアミロイドの沈着などの脳神経変性と反応性のglyosis変化を1枚の切片で観察することに成功した。
法医解剖後の病理検索として我々の研究室で、日常的に行われている脳組織の染色時にレクチン染色、免疫染色を加え、糖鎖組織学的検討を行った。検討により、鍍金染色により確認されていた老人斑と神経原線維変化、また由来不明のcorpora amylaceaがレクチン染色により明瞭に染色されることを見いだした。また、ダウン症や老人性痴呆患者脳では脳白質部部に2種類の沈着構造物がレクチン染色で見いだされた。これらのうち一つは特に、小脳白質血管周囲に、他方は、大脳、とくに後頭葉白質部、あるいは脳幹部に見られた。いずれも現段階では成因、病的意義は不明であるが、脳浮腫時の脳血管関門の破綻との関連が考えられている。この二つの変化は、これまで報告されていない糖鎖の沈着で、正常と判断される脳には見いだされておらず、何らかの病理学的意義を有していると判断される。この部分への他の構造物質の関与をさらに検討しなければならない。さらに海馬歯状回の分子層に球形を示す全く未報告の糖鎖関連沈着がレクチン染色や抗コンドロイチン硫酸抗体を用いた免疫染色で見いだされた。記憶の場である海馬歯状回分子層での神経ネットワークに何らかの悪影響を生じている可能性が否定できず、更なる検討を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Y.Yamamoto,Y-H. Li,I.Ushiyama,A.Nishimura,I.Ohkubo,K.Nishi.: "Puromycin-sensitive alanyl aminopeptidase from human liver cytosol : purificationand characterization."Forensic Science Interational. 113. 143-146 (2000)
• [文献書誌] I.Ohkubo,Y-H.Li,T.Maeda,Y.Yamamoto,T.Yamane P-G Du,K.Nishi.: "Molecular cloning and immnohistochemical localization of rat dipeptidyl peptidase III"Forensic Science Interational. 113. 147-151 (2000)
• [文献書誌] A.Nishimura,S.Sawada,I.Ushiyama,Y.Yamamoto,T.Nakagawa,A.Tanegashima,K.Nishi: "Lectin-histochemical detection of degenerative glycoconjugate deposits in human brain."Forensic Science Interational. 113. 265-269 (2000)
• [文献書誌] K.Ikemoto,A.Nishimura,N.Okado,M.Mikuni,K.Nishi,I.Nagatsu: "Human midbrain dopamine neurons express serotonin 2A receptor : an immunohistochemical demonstration."Brain Research. 853. 377-380 (2000)
• [文献書誌] K.Ikemoto,R.Amano,A.Ishibe,A.Nishimura,K.Nishi,I.Nagatsu: "Quantitative analysis of tyrosine hydroxylase-, aromatic L-amino acid decarboxylase- or phenylethanoamine-N-methyltransferase-immnoreactive neurons in the human medullary C1 region."Acta Histochem.Cytochem.. 33. 259-265 (2000)
• [文献書誌] A.Nishimura,S.Sawada,I.Ushiyama,A.Tanegashima,T.Nakagawa,K.Ikemoto,Y.Yamamoto,K.Sato,S.Rand,B.Brinkmann,K.Nishi: "Postmortem diagnosis of brain disorders : The histochemical detection of glycoconjugate deposition with lectins."Anil Aggrawal's Internet J of Forensic Medicine,. (2000)
• [文献書誌] 澤田園,西村明儒,牛山郁子,中川季子,山本好男,西克治: "渡金法と二重の免疫染色による三重染色の法医神経病理学的診断への応用"法医病理. 6. 46-54 (2000)