研究概要 |
昨年度は、直接法によるin-situ-PCRの実験条件を確定するため、肺炎の事例を用いて、肺炎球菌、ブドウ球菌、溶連菌の特異的プライマーを用いた検出を行った。その結果、最適な実験条件が確定でき,その成果としての論文が掲載された。この方法により、時間経過を異にする肺炎の段階が確認でき、またマクロファージに貪食され崩壊した菌由来DNAも検出できることが判明し、この方法が高感度であることが立証された。その後、ウイルスの検出についてもヘルペス群についての実験条件を確定したため、論文として発表予定である。 また低酸素状態で発言されるRNAの検出をin-situ-RT・PCR法にて行った。標的としたのは、エリスロポエチン、インターロイキン-la、血管内皮細胞増殖因子ほか各種のサイトカインである。しかしながら,剖検試料においてはこれらの発現は一般に強くなく,検出にはやや困難を極めている。特に急性の窒息死では、これらのマーカーの発現は極めて少ない。したがって,実践的な応用を行うためには,核DNAと関連したこれらの発現のみならず,細胞呼吸と密接な関連性を有するミトコンドリアDNAとその発現にまで検索範囲を広げて,統合的に解析する必要性が新たに浮かび上がってきた。 ミトコンドリアDNAには細胞間での変異(ヘテロプラスミィ)があるため、単一細胞から抽出したDNAの解析が必要である。そのため、マイクロダイゼクションシステムを用い、特に低酸素状態に感受性の高い脳組織についての解析を行う予定である。
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