研究課題/領域番号 |
11670417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
法医学
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研究機関 | 島根医科大学 |
研究代表者 |
高橋 節典 島根医科大学, 医学部, 助手 (90032226)
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研究分担者 |
江藤 秀顕 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80244094)
稗田 洋子 島根医科大学, 医学部, 助教授 (00181058)
木村 恒二郎 島根医科大学, 医学部, 教授 (30153191)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2001
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キーワード | 覚醒剤 / グルタミン酸 / ドパミン / 線条体 / HSP-72 / 免疫組織化学 / 心筋細胞 |
研究概要 |
実験動物にラットを使用し、覚醒剤投与による脳内神経伝達物質の経時的変化と細胞応答について検討を行った。 以下簡単に実験手法を記す。まず脳内に透析膜プローブを挿入した後、生理食塩水を環流させるマイクロダイアリシス法を行う。得られた環流液を高速液体クロマトグラフを用いて各種神経伝達物質の濃度変化を測定するものである。この手法を用いて腹腔内に覚醒剤であるメタンフェタミンを投与した時の各種アミノ酸及びドパミンの動態を分析した。生理食塩水を投与した群を対照として比較検討した。さらにラット脳を摘出し、種々の病理組織学的検討を加えた。 以下簡単に結果ならびに成果を記す。覚醒剤投与により、脳内のグルタミン酸とドパミンの有意な増加を認めた。その他のアミノ酸には有意な変化は見られなかった。しかし、グルタミン酸の増加は2倍程度に留まっており、生食投与群との有意差は見られなかったため、投与に伴う刺激による影響と考えられた。一方、ドパミンの増加は生食投与群と比較して数倍から数百倍になっていた。部位では線条体での変化が海馬より顕著であった。覚醒剤投与後のラットは行動亢進、常同行動や眼の充血等の特有の精神神経症状を呈することを確認しており、これらの症状の発現にはアミノ酸類よりも線条体におけるドパミンの変化が深く関与しているものと推測された。覚醒剤投与後のラット脳組織の変化を病理組織学的に検討した。その結果、形態学的な変化は見られたものの、脳組織のうち一部のアストロサイトにストレス蛋白であるHSP-72の陽性像を認めた。この結果から覚醒剤が脳内の刺激伝達に何らかの影響を及ぼしているものと推察された。 さらに覚醒剤中毒にて死亡したと思われる司法解剖例を用いて病理組織学的に検討した。その結果、心臓にて心筋細胞の不規則な断片化が見られたものの、その他の臓器には明らかな病変は見出せなかった。脳組織や心筋細胞の一部にストレス蛋白であるHSP-72が免疫組織化学染色にて陽性を示したことから覚醒剤は心臓にも何らかの影響を与えていることが推測された。
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