研究概要 |
平成12年度は,(1)副腎皮質ホルモンの変化,(2)副腎髄質におけるGDNF発現機序を中心に検討を行った.動物実験はこれまでと同様の方法で行った.すなわち,Wistar系雄性ラット(10週齢)を用い,トルエン(1,000ppm)を1日4時間吸入させた.対照群,4日間吸入群,7日間吸入群,10日間吸入群(各群4匹)について検討した.(1)血中ACTH濃度は4日目まで上昇し,10日目で低下していた.有意の差は認められなかったものの,視床-下垂体-副腎系を介した機序が示唆された.そこで,副腎皮質内分泌機能の変化について検討した.血中aldosterone濃度もACTHと同様の変化を示していたが,こちらも有意差は認められなかった.そこで,副腎皮質ホルモン合成酵素の遺伝子発現を検討する目的で,P450sccおよび3β-HSDのmRNAについてRT-PCR法で半定量的に検討したが有意の差は認められなかった.統計学的に明らかにはできなかったことから,ホルモンの合成・分泌の亢進はあったとしても吸入期間の短い時期の一時的変化に留まるものと考えられた.(2)また,副腎髄質のGDNFの発現亢進が認められた.髄質細胞,脊髄のIML神経細胞についてGDNF受容体,HSP70およびc-Fosを免疫組織化学的に検討したところ,GDNF受容体,神経細胞障害のいずれもIML神経細胞にのみ観察された.副腎髄質におけるGDNFの発現は,トルエンによる脊髄のIML神経細胞障害に対応した変化と考えられた.
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