ヒト精液中に特異的なγ-glutamyltransferase(γ-GTP)活性酵素であるユビキチン化CD10-CD13複合体(SEGAP:seminal γ-GTP active protein)の脱ユビキチン化と再構成を試み、更に、生理活性について検討した。抗CD10抗体結合ビーズによるアフィニティークロマトグラフィーで精製したSEGAP(50μg)にユビキチンC-末端分解酵素であるイソペプチダーゼT(1.6及び4μg)、UCH-L3(0.4及び1μg)を作用させ、SEGAPの分子量、酵素活性の変化を観察した。HW-55ゲルろ過ではγ-GTP活性の変化は認められず、活性分画のSDS-PAGEでの分子量の変化も観察されなかった。SEGAPのユビキチン化は両分解酵素の基質となる結合ではないと考えられる。現在、界面活性剤等による物理的解離を検討し、ユビキチン化CD10とCD13の再構成によるγ-GTP活性復活の観察を試みている。また、ヒト末梢血単核球(2x10^6個)を精製SEGAP(100μg/ml)で刺激し、細胞のチロシンリン酸化の変化を観察した。RPMI、あるいは、SEGAP添加0、1、2、5、10、15、20、30分後にNP40で反応を止め、超音波で破砕した単核球サンプルを抗リン酸化チロシン抗体でウェスタンブロットした。RPMIに比較してSEGAP刺激細胞では10分後に僅かに一過性の低分子タンパク(約10kDa)のリン酸化が観察されたものの、有意の差は認められなかった。SEGAPの添加量に変えて再検中である。また、HeLa細胞等への刺激観察も検討中である。更に、前立腺疾患とSEGAPユビキチンについて免疫組織学的検討を行ない、癌化等の病変によりユビキチンの分布に変化が観察された(日本法医学雑誌、印刷中)。前立腺病変と血清中のSEGAP量の変化を観察中である。
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