研究概要 |
ヒト精液中に特異的なγ-glutamyl transpeptidase(γ-GTP)活性酵素であるユビキチン化CD10-CD13複合体(SEGAP:seminal γ-GTP active protein)の生理活性についてFACSとウェスタンブロッテイングで検討した。 (A)FACS法によるSEGAPの培養細胞に対する結合性の検討:SEGAPは抗CD10抗体結合ビーズによるアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、一部をビオチン化後、PBSに透析した。培養細胞のうちHeLa(human cervical carcinoma),Raji(human B cell lymphoma),HL60(human promyelocytic leukemia)を2x10^6cells/tubeに調整した。細胞はビオチン化したSEGAPと氷冷下で30分反応させた後にストレプトアビジン-ローダミンを結合させ、ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーで蛍光を測定した。SEGAPを反応させたHela、Raji、HL60はコントロール細胞群とは異なる蛍光ピークを示したことから、SEGAPは3種の細胞に結合する可能性が高いと考えられた。 (B)ウェスタンブロティングによるSEGAPの細胞内チロシンリン酸化への影響の検討:培養細胞HeLa、Raji、HL60は1x10^6cells/tubeに分注しRPMIで希釈したSEGAP(5μg/ml)、抗CD13抗体(50μg/ml)を添加し、37℃で、0、1、5、10、20、30分インキュベートした。反応はプロテイナーゼ及びフォスファターゼ阻害剤を含むNonidet P-40を加えて停止した。細胞液は超音波処理後に遠心し、上清を10%アクリルアミドゲル電気泳動し、メンブレンにトランスブロットした。抗リン酸化チロシンモノクローナル抗体を反応させ、EnVision+/HRPを用い、DABで染色した。CD13が細胞膜に存在するHL60、および、HeLaでは抗CD13抗体刺激後1分で約120kDa、5分で約55kDaのタンパク質のリン酸化が観察されたが、CD13が存在しないRajiでは観察されなかった。抗体による刺激の伝達に関する報告から、120kDaはp120-Cbl、55kDaはLynである可能性が高い。HeLaをSEGAPで刺激した場合、1分後に約110kDaのタンパク質がリン酸化され、5分をピークに減弱した。HL60をSEGAPで刺激した場合、1分後に約120kDaのタンパク質がリン酸化され、5分で消失し、約110kDaのタンパク質は5分でリン酸化され徐々に減弱した。70kDaのタンパク質は1分でリン酸化され、経時的に増長した。約60kDaのタンパク質は1分後にリン酸化され5分をピークに減弱した。リン酸化されたタンパク質の分子量から、PI3kinase、Syk、ZAP-70、Cdc family等の細胞内シグナル伝達物質の可能性が高い。以上から、SEGGAPがHeLa及びHL60の細胞内タンパク質チロシン残基のリン酸化を誘導し、細胞内への情報伝達に関与すると考えられる。
|