ヒト精液中に特異的なγ-glutamyl transpeptidase活性酵素であるユビキチン化CD10-CD13複合体(SEGAP)の脱ユビキチン化と再構成を試み、更に、生理活性について検討した。抗CD10抗体結合ビーズによるアフィニティークロマトグラフィーで精製したSEGAPにユビキチンC-末端分解酵素であるイソペプチダーゼT、および、UCH-L3を作用させた後に、ゲルろ過しても分子量・活性ともに変化は認められず、SEGAPのユビキチン化は両分解酵素の基質となる結合ではないと考えられる。 SEGAPの生理活性を解明するために、FACS法によりSEGAPの培養細胞に対する結合性を検討した。培養細胞のうちHeLa、RajiおよびHL60とビオチン化したSEGAPを反応させフローサイトメトリーで蛍光を測定した結果、SEGAPを反応させた細胞はコントロール細胞群と比較して有意に強い蛍光ピークを示したことから、SEGAPは3種の細胞に結合する可能性が高いと考えられた。 更にSEGAPの細胞内チロシンリン酸化への影響をウェスタンブロットにより検討した。HeLaをSEGAPで刺激した場合、1分後に約110kDaのタンパク質がリン酸化され、5分をピークに減弱した。HL60をSEGAPで刺激した場合、1分後に約120および60kDaのタンパク質がリン酸化された。約110kDaのタンパク質は5分でリン酸化され徐々に減弱した。70kDaのタンパク質は1分でリン酸化され経時的に増長した。リン酸化されたタンパク質の分子量から、PI3kinase、Syk、ZAP-70、Cdc等の細胞内シグナル伝達物質の可能性が高い。以上から、SEGAPがHeLaあるいはHL60の細胞内タンパク質チロシン残基のリン酸化を誘導し細胞内への情報伝達に関与すると考えられる。
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