本研究は炎症における好中球機能の調節、とりわけ組織障害抑制機構としてのアポトーシスの役割の解明と好中球のアポトーシスに基づく損傷の受傷経過時間推定のための基礎的知見を得ることを目的とするものである。 平成11年度は、好中球のアポトーシスに及ぼす貪食の影響を貪食量および貪食後の経過時間に関して詳細に検討した。すなわち、ラット腹腔にプロテオースペプトンを投与し、12時間後に腹腔洗浄により腹腔浸出細胞を採取し、密度勾配遠心法で精製して95%以上の純度で好中球を得た。この好中球にオプソニン化したoil particleを貪食させ好中球のアポトーシスを生化学的(DNA断片化)および組織学的(核の断片化)方法により検討したところ、いずれの方法においても貪食は好中球のアポトーシスに影響しないことが示された。炎症の場においては好中球は炎症のメディエーター(LPS)や炎症性サイトカイン(IL-1β)などの影響下にあると考えられることから、好中球にLPSやIL-1βを作用させると好中球のアポトーシスは抑制された。しかし、これらの存在下にoil particleを貪食させるとアポトーシスの抑制は解消された。これらの結果は、LPSやIL-1βは炎症の初期において好中球を活性化するとともにアポトーシスを抑制することにより障害を受けた細胞の排除や殺菌等の好中球の機能を発揮させる。一方、炎症の後期においては破壊された細胞の残渣や細菌を貪食することにより再びアポトーシスに向かうことを示すものと考えられる。今後、貪食による好中球の活性変化について更に検討を進める予定である。
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