研究概要 |
我々は今回の科学研究費補助を受けて、分泌型遺伝子(FUT2)の多型についてこれまで行っていた日本人に加えて東アジアの人種として、中国人、韓国人を解析した。この結果主たるFUT2のinactivating mutationは385番目の塩基のAからTへの置換であったが、中国人には日本人で5〜8%で認められるFUT2とその偽遺伝子(Sec1)との間のFusion geneが認められないこと、さらに韓国人でもFusion geneは0.67%程度と頻度が低いこと等の結果から、Fusion geneは日本人に特有の変異であることを示した(Liu et al.,1999,J.Hum.Genet.,44,181-184)。さらにFUT2に関しては以前インド人のBombay型に見い出されたgene deletionがFUT2のcodingの上流と下流にある2つのAlu配列のrecombination(unequal crossover)によって生じたことを証明した(Koda et al.,2000,Hum Genet.,106,80-85)。またFUT2に関してサルと人とのsequenceを比較することによりFUT2のnull alleleのうち西洋人やアフリカ人に特徴的な428番目のGからAへのnonsense mutationをもつallele(se^<428>)はそのoriginが300万年以上と考えられFUT2は少なくとも人では何らかのselectionを受けていることが示唆された(Koda et al.,2000,J.Mol.Evol.,in press)。また血清のα(1,3)フコース転移酵素活性をコードするFUT6に関してはアフリカ人、ヨーロッパ人、日本人各々約50人のDNA sequence解析をしたところ新たに12個のpolymorphic siteを同定した。これらの内、一つのmutationがFUT6のinactivationに関与していることが示された(Pang et al.,1999 Ann Hum Genet,63,277-284.)。
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