研究概要 |
平成12年度研究計画に従い,寒冷刺激によるアミロイド前駆タンパク(APP)の変化(変異)についてラット脳を用い等電点電気泳動法で実験的に検討した。また,前年度にラットで確立したAPP検出法が実際事例において使用可能か否かを,前年度に採取・保存された司法解剖事例の脳を試料として検討した。等電点電気泳動は両性電解質Pharmalyte^<TM> 3-10を含むポリアクリルアミドゲル(T=5%,C=3%)を使用し,1000V,20mA,3Wで,前泳動を30min,本泳動を210min行った。 その結果,ラットではAPPは通常3本のバンドとして検出されたが,寒冷刺激により通常のバンドより陰極側に幅の広い複数のバンドが観察されることが判明した。この現象は,試料の採取部位による差はほとんどなかったが,加齢による影響を受けた。すなわち,低週齢および高週齢のラットでは比較的この変化は生じにくく,10〜15週齢のラットで生じやすいことが判明した。一方,解剖事例の脳からAPPの検出を試みたところ,ラットの場合と異なり,APPはほとんど抽出されていないことが判明した。そこで抽出法の再検討を行ったところ,試料のホモジネートの沈渣に難溶性タンパク質の可溶化剤(8M Urea,4%CHAPS,0.2%Bio-Lyte 3/10)を加えて再ホモジネートし,15000Gx60minの遠心を行った上清からAPPを検出することが可能であった。また,平成12年司法解剖例68例のうち死後変化が少なく,死因が確定できたもの21例(凍死0例)から,大脳皮質,海馬,小脳および延髄を採取し,APPの検出用試料として保存した。
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