研究概要 |
肥満細胞にはリゾリン脂質に対するレセプターのうち、Edg-2,4,5が発現していることを確認したが、肥満細胞機能への関与を明らかにするに至っていない。肥満細胞機能に関し以下のことを研究したので報告する。 肥満細胞の高親和性IgEレセプターに結合した抗原特異的IgEに抗原が結合し架橋するとケミカルメデイエーターが遊離され、即時型アレルギー反応が起きる。この際抗原は肥満細胞と偶然接近するかのように認識されている。肥満細胞はStem Cell Factor(SCF)やケモカイン刺激によって遊走し、肥満細胞の遊走現象はアレルギー性炎症の病態に重要であると思われる。今回、私は抗原特異的IgEで感作された肥満細胞は抗原へ向かって遊走するという興味深い現象を発見した。マウス肥満細胞株MC/9を用いてBoyden Chamber法により、polycarbonate膜を透過した細胞数を測定した。anti-DNP IgEで受動感作した肥満細胞を上室に入れ、下室に抗原(DNP-ヒト血清アルブミン、DNP-HSA)を入れた。至適濃度の抗原を下室に添加した場合、肥満細胞は1時間後より下室で観察され、4時間後まで下室へ遊走する細胞数は直線的に増加た。IgE抗体で感作していない細胞を用いた場合や、上室にのみ抗原を添加した場合、下室へ遊走する細胞数は僅かであった。また、過剰な抗原を下室に添加した場合、遊走の程度は有意に弱かった。抗原による遊走はSCFによる遊走よりも強力であった。マウス骨髄より、IL-3、SCF存在下に4週間培養して得られた培養肥満細胞においてもMC/9に比し程度は弱いものの抗原による遊走が観察された。肥満細胞の抗原に向かう遊走はp38 MAP kinase(p38 MAPK)阻害薬SB203580、Rho-kinase阻害薬Y-27632によって抑制された。PI3-kinase阻害薬wortmanninや低濃度のSB203580によって肥満細胞の抗原刺激によるp38 MAPKやその下流のMAPKAP kinase2の活性化を部分的に抑制しても遊走は抑制できないことより、遊走抑制にはp38MAPK、MAPKAP kinase2活性化の完全な遮断が必要とされると予想された。
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