研究課題/領域番号 |
11670439
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 孝 東京大学, 医科学研究所, 助手 (00292855)
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研究分担者 |
岩本 愛吉 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10133076)
中村 義一 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40114590)
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キーワード | ニューモシスチス・カリニ / 院内感染 / 薬剤耐性 / 分子生物学 |
研究概要 |
【目的】ニューモシスチス・カリニ(Pc)肺炎の予防及び治療として第一に選択される薬剤は、葉酸合成酵素阻害作用を有するSulfamethoxazole-Trimethoprim合剤である。サルファ剤は、葉酸合成酵素であるDihydropteroate Synthase(DHPS)に対して基質と競合的に結合することによって作用を発現する。しかし、Pcは培養系が確立していないために、in vitroにおいて薬剤耐性を判断することが困難である。近年、Pcが有するDHPSにおいて、アミノ酸の変異が報告され、サルファ剤を用いたPc肺炎の予防失敗や治療不成功及び予後との相関性が示唆されている。そこで、我々は、Pcにおける薬剤耐性を予測することを目的として、Pc肺炎症例より得られた気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いて、DHPS領域におけるアミノ酸の変異の有無を検討し、Pc肺炎症例におけるサルファ剤の治療成績との関連性を解析した。 【方法】対象は、1994年4月より1999年9月までに発症したPc肺炎24例(基礎疾患:HIV感染症16例・悪性リンパ腫3例・腎移植後2例・急速進行性糸球体腎炎1例・多発性動脈炎1例・リンパ性間質性肺炎1例)である。方法として、BALFより核酸を抽出し、PCR法によってDHPS領域を増幅し、塩基配列およびアミノ酸配列を決定して、変異の有無を検討した。そして、各Pc肺炎症例の治療経過を追跡して、治療不成功(薬剤を10日以上投与しても呼吸不全の改善が認められない)とDHPS領域の変異との相関性を解析した。 【結果】DHPSにおける変異(T55AあるいはP57S)が6例(25%)に、認められた。そして、DHPSの変異を有するPc肺炎群は、変異を有しないPc肺炎群と比較して、有意に治療不成功を示していた(100%versus11.1%,p=0.002)。 【結論】PcにおけるDHPSの変異は、サルファ剤に対する耐性の可能性を示唆するので、薬剤を選択する上で重要な因子である。
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