研究概要 |
我々は、アレルギー性炎症局所ではIgE以外の何らかの免疫学的刺激も炎症細胞活性化に関与しているとの作業仮説の下、気道内腔に豊富に存在する分泌型IgA(sIgA)が好塩基球脱顆粒作用を有する現象を見出し既に報告したが、本所究では、その現象の解析と意義を検討中である。 1)IL-3によりプライミングした好塩基球を、sIgAを吸着したプレートに入れることで好塩基球は約50%ものヒスタミン遊離を起こすことに基づき、細胞内刺激伝達の各種阻害剤によるヒスタミン遊離変化をIgE依存性遊離と比較した。その結果、pertussis toxinは好塩基球のIgE依存性脱顆粒に何ら影響を与えないにも関わらず、sIgA依存性遊離を完全に抑制した。このことは、sIgA依存性好塩基球活性化がGタンパクを介しており、IgE依存性活性化とは全く異なる刺激伝達系に基づくことを示している。また、sIgA依存性活性化はwortmanninでも抑制されることから、PI3-kinaseも刺激伝達に関与することが示された(Bichem Biophys Res Commun 264:575,1999)。 2)sIgA受容体については、現在フローサイトメトリーにより解析中であるが、現在のところ測定は困難である。これはおそらくは結合の親和性が非常に低いためと考えられ、今後sIgAだけでなく、その構造の一部であるsecretory componentやIgAも用いた測定系の樹立を目指している。 3)気管支喘息患者の好塩基球を用いてsIgA依存性脱顆粒を調べたところ、患者の一部でIL-3によるプライミングをしなくても脱顆粒を起こすことを見出しており、今後さらに症例数を積み重ねて検討を進める予定である。
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