我々は、気道内腔に豊富に存在する分泌型IgA(sIgA)が好塩基球脱顆粒作用を有する現象を既に報告しているが、本研究ではその知見をさらに押し進めて以下の点を明らかにした。 1)IL-3によりプライミングした好塩基球を、sIgAを吸着したプレートに入れることで好塩基球は約50%ものヒスタミン遊離を起こすことを見出し、細胞内刺激伝達の各種阻害剤によるヒスタミン遊離変化をIgE依存性遊離と比較した。その結果、pertussis toxinは好塩基球のIgE依存性脱顆粒に何ら影響を与えないにも関わらず、sIgA依存性遊離を完全に抑制したことから、sIgA依存性好塩基球活性化がGタンパクを介しており、IgE依存性活性化とは全く異なる刺激伝達系に基づくことが示された。また、sIgA依存性活性化はwortmanninでも抑制されることから、PI3-kinaseも刺激伝達に関与することが示された。 2)sIgA受容体の測定を、sIgA或いはsecretory componentに対する各種モノクローナル・ポリクローナル抗体を使って試したが、フローサイトメトリーによる検出は困難であった。おそらくは、sIgAと受容体との親和性が低くて、単分子のsIgAは容易に解離しやすいことが障害になっていると考えられた。 3)気管支喘息患者の好塩基球を用いてsIgA依存性刺激を行ったところ、一部の例でIL-3によるprimingを行うことなく脱顆粒が惹起され、気管支喘息患者の好塩基球はin vivoで既にサイトカインによるprimingを受けていることが示唆された。
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