全身性エリテマトーデスや強皮症などに代表される全身性自己免疫疾患では、抗DNA抗体や抗U1RNP抗体など、全身性に発現する核内分子に対する自己抗体が特徴的である。こうした核内成分に対する抗体産生は、自己抗原特異的なCD4ヘルパーT細胞によって制御されている。しかし、なぜ本来免疫寛容であるはずの自己反応性T細胞が活性化されているかについては不明である。全身性に発現する抗原に対する免疫学的寛容については、胸腺におけるクローン除去による中心性免疫寛容成立に加えて、末梢性にも免疫学的寛容を導入する機序が想定されている。そこで本研究では核内抗原とそれを認識するT細胞レセプターのそれぞれのトランスジェニックマウス(Tg)を用いて、免疫学的寛容導入の機序と、この寛容が破綻した場合の病態の推移を観察することを目的とした。 我々は、卵白アルブミン(OVA)cDNAに核内移行シグナルを付与した核内発現型OVAトランスジェニックマウス(nOVA-Tg)を作成した。まずOVAを認識するT細胞レセプターTgとDO11.10とのダブルTgを作成したところ、胸腺での自己反応性T細胞の削除は完全でなく、末梢で抗クロノタイプ抗体陽性細胞が出現し、さらに自己抗体産生も誘導した。この中心性免疫学的寛容からの逸脱は内在性のα鎖の再構成発現によることをみいだした。 次にnOVATgに、DO11.10T細胞を移入したところ、一過性の増殖の後アナジーとなった。この末梢での自己抗原との出会いとアナジーの誘導は樹状細胞によって担われるということを見出した。核内抗原も共刺激分子を発現している樹状細胞によりCD4陽性T細胞に抗原提示されるが、その抗原提示は免疫寛容を誘導することを確認した。この抗原提示の意義を今後追求する必要がある。
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