近年、骨芽細胞の膜表面に発現されるRANKL(receptor activator of NFκB)蛋白が破骨細胞の分化、誘導に中心的な役割を担っていることが明らかになっている。またリウマチ滑膜局所でこのRANKL蛋白を発現しうる細胞として1)滑膜線維芽細胞と2)滑膜浸潤Tリンパ球が知られている。本研究ではリウマチ滑膜から多量に産生され、かつ骨吸収作用を有するインターロイキン11(IL-11)に着目して、滑膜線維芽細胞のRANKL発現に対するIL-11の効果を検討した。この結果、我々は1)IL-11は滑膜線維芽細胞に作用してRANKL mRNAの発現を増強すること、2)IL-11はデコイレセプターとしてRANKLの作用を抑制するosteoprotegerinの産生に対しては影響しないことを明らかにした。次に、滑膜細胞が実際に破骨細胞に分化しうるか否かについて問題となった。破骨細胞はマクロファージ系の細胞から分化するので、滑膜マクロファージがRANKLを発現しうる滑膜線維芽細胞や滑膜浸潤Tリンパ球の作用をうけて破骨細胞に分化する可能性がある。滑膜線維芽細胞とマクロファージの混合培養系ではIL-11を加えても破骨細胞は誘導されなかった。一方、滑膜浸潤Tリンパ球と滑膜マクロファージの混合培養系ではIL-2の存在下で多量のTRAP陽性多核巨細胞が誘導された。この細胞は象牙切片の吸収作用はなく、破骨細胞と同定できなかったが、破骨細胞の前駆細胞としての特徴を有していた。今回の研究においてIL-11は滑膜線維芽細胞のRANKLの発現を増強するが、破骨細胞の誘導に対する作用は認められなかった。一方、リウマチ滑膜における破骨細胞の誘導に浸潤Tリンパ球が深く関与していることが示唆され、その役割についてさらなる検討が必要と考えられた。
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