研究概要 |
1 細胞外アデノシンがヒト滑膜細胞の増殖・生存に与える効果:関節リウマチ(RA)患者由来の初代培養滑膜細胞ならびにヒト滑膜細胞株を用いてアデノシン(Ado)が細胞増殖ならびに細胞死に与える影響を検討した。24時間培養では,50μM以上で濃度依存性にアポトーシスによる細胞死が観察された。またAdo5μMでも投与1〜2時間後からDNA合成低下を認め,さらに時間・濃度依存性のDNA合成低下が見られた。以上より細胞外Adoは濃度依存性に細胞増殖を抑制し,さらに少なくとも高濃度ではアポトーシスを誘導することが判明した。 2 細胞外アデノシンによる滑膜細胞増殖抑制・細胞死の分子機構:細胞表面Ado受容体(AdoR)はすべてG蛋白(GsまたはGi)と共役しているので,cAMPが上記作用のエフェクターであるかを検討した。AdoによりcAMPの増加が認められ,さらにホルスコリンによってアデニル酸シクラーゼを刺激するとAdoの場合と同様cAMPの増加とアポトーシスが観察された。すなわち細胞内cAMPを介した作用であることが示唆された。 3 責任受容体の検討:RT-PCR法では滑膜細胞において4種すべてのAdoRのmRNA発現がみられた。AdoRのうちA_<2A>,A_<2B>はGsに共役している。A_<2B>はリガンド親和性が低く選択的アゴニスト・アンタゴニストが存在しないため選択的A_<2A>アゴニスト・アンタゴニストを用いて、どちらが責任受容体かを検討した。選択的A_<2A>アンタゴニストではAdoによるcAMP増加は抑制されず,また選択的A_<2A>アゴニスト単独ではcAMPは増加しなかった。すなわちA_<2B>が責任受容体であることが判明した。 以上の結果からA_<2B>受容体を介したシグナルによりAdoはヒト滑膜細胞の増殖を抑制することが示され,リウマチの関節病変の新たな治療法の可能性が示唆された。
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