研究概要 |
B細胞における新しい機能分子RP105の発現、及び機能を各種自己免疫疾患末梢血について検討した。マウスと同様に、健常者においてはほとんどすべてのB細胞がRP105を発現していたが、興味深いことに、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SjS)、皮膚筋炎(DM)の3疾患ではRP105陰性B細胞がそれぞれ、15.9%,14.5%,20.2%と著明に増加していた。これらの疾患はいずれもB細胞の活性化と血清免疫グロブリンの増加を特徴としている。これらに比較して、慢性関節リウマチ、多発性筋炎,ベーチェット病、血管炎などではRP105陰性B細胞の比率は低く、健常者と差がなかった。このうち特にSLEについて詳細な検討を行った。RP105陰性B細胞の比率はSLEの活動性とよく相関し、7例のSLE患者で経過をおって測定したところ、その比率は高活動期の35.2%という高値から非活動期には3.3%の低値にまで抵下した。RP105陰性B細胞の他のphenotypeを検討したところ、CD95+,CD86+,CD38++,IgD-,IgM±であり,非常に活性化された状態のB細胞であることが判明した。しかし、CD5+のB1細胞とは明らかに異なったサブセットに属することがわかった。 さらに、in vitroにおける実験では、このRP105陰性B細胞はステロイドによって容易にapoptosisに陥りやすいことが証明され、このことが非活動期に減少する一因であることが推定された。また、RP105腸性B細胞は刺激を受けても全く免疫グロブリン(Ig)を産生しないのに対し、陰性B細胞は培養上清中に刺激なしでIgを産生することも証明できた。 このように、RP105陰性B細胞はある種の自己免疫疾患の病態形成に重要な役割を演じていることが示唆され、現在もさらに詳細な検討を加えているところである。
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