研究概要 |
1)TCR-CD3複合体架橋によるチロシンリン酸化 正常人、SLET細胞を抗CD3,抗CD4抗体で架橋してシグナルを入れると、正常T細胞には、18-23kDa,60kDa,70kDa,100kDa,120kDaにチロシンリン酸化された分子が検出された。一方、SLET細胞では、全体的にチロシンリン酸化のレベルが低く、なかでもpp18-23とpp100〜120では、チロシンリン酸化が高度に低下し、しかもそれが多数例で観察された。 2)SLET細胞表面におけるTCR-CD3複合体構成サブユニットの発現 TCR-CD3複合体を形成する各サブユニットの表面発現をフローサイトメーターで解析。SLEでは、正常人、慢性関節リウマチ(RA)患者に比べ、TCRα,TCRβ,CD3ε、TCRζの発現が有意に低下していた。なかでもTCRζは低下が最も著明。 3)T細胞全体のTCR-CD3複合体サブユニットの発現 T細胞表面での発現低下の原因として、細胞膜へのトランスポートに異常があるのか、細胞質全体での蛋白発現が低下しているのかを明らかにするため、T細胞を1%NP-40で溶解した全溶解液を用い、各サブユニットを免疫沈降。その結果、TCRζは60%のSLE症例で正常の半分以下に発現が低下していた。同様の成績は、TCRα,TCRβ,CD3εにおいても認められたが、CD3γ,CD3δ鎖で興味ある成績が得られた。則ち、発現低下しているTCRζとは対照的に、これらのサブユニットは正常と同等かむしろ増加しており、TCRζなどの他のサブユニットの発現低下を補っているものと考えられた。
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