本研究(課題番号11670456)での、今年度の主な研究成果は以下の通りである。 (1)全身性エリテマトーデス(SLE)患者では、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)clone4-1のgag、env領域遺伝子のmRNAへの転写が認められる。 (2)SLE患者リンパ球にはclone4-1 gagウイルス蛋白が同定されているが、転写されているSLE患者clone4-1のgag領域遺伝子には、報告されているprototypeのclone4-1に存在しているstop codonが共通して破壊されており、これが、clone4-1蛋白への翻訳に関連していると考えられる。 (3)GeneBank databaseを用いて検索すると、SLEで転写されているclone4-1は、第11番染色体短腕側に局在しているclone4-1と相同性が高く、この部分のHERVが転写されている可能性が高い。 (4)健常者で、この転写がみられないのは、methylationによる転写阻止が関連している可能性が高い。 (5)SLEでのclone4-1のmRNA量をRQ-PCR(TaqMan法)にて解析すると、治療による病態の改善で、その量に著しい低下がみられる。 (6)Clone4-1由来のウイルス合成ペプチドは、T細胞の活性化、不応性(anergy)、多クローン性B細胞活性化などSLEに特徴的なリンパ球機能異常を誘導しうる。 以上の結果を踏まえて、clone4-1 gag遺伝子挿入発現ベクターを用いた、細胞およびマウスへの移入実験を計画中である。
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