本研究課題において、私達が明らかにしてきたことを列記する。 1)多くののSLE患者のリンパ球にて、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)clone4-1のmRNAは転写されており、一部の患者ではこのウイルス抗原と抗体が同定されるがこうしたことは、健常者や慢性関節リウマチ患者などではみられない。 2)SLE患者で転写されているclone4-1は、第11番目染色体に局在しているclone4-1と極めて相同性が高く、このclone4-1の転写・翻訳過程には、HERV遺伝子のメチル化の障害とストップコドンの不活化が関与していると考えられた。 3)Clone4-1のmRNA量をRQ-PCR法で定量するとこのmRNA量は、SLEの治療による活動性の低下によって減少する。 4)Clone4-1由来の合成ペプチドは、試験管内でT細胞活性化、T細胞アネルギー、多クローン性B細胞活性化などSLEで認められる免疫異常を誘導しうる。 以上の研究結果は、マウスSLEモデルなどの研究から明らかにされているようにヒトSLEの発症にもHERVが何らかのかたちで関与していることを示唆している。 こうした結果を踏まえ、さらにHERVのSLE発症における役割を明確にするために現在SLE患者由来clone4-1を用いたDNAimmunization法によるSLEモデルマウス作成を試みている。これらのことは、将来のSLEの遺伝子治療に連なる可能性がある。
|