研究概要 |
Graft versus Host(GVH)病及びHost versus Graft(HVG)病は移植治療上重篤な合併症であり、これは同種、異種拒絶反応として説明されているが、これまで多くの施設においてマウスモデルにおけるGVH病、HVG病の研究が行われ多彩な多臓器アレルギー病態を主体としたヒト自己免疫疾患類似の病態が報告されている。我々は最近HVG病の研究で興味ある結果を得た。それはHVGマウスにおいて1.血中IgE,IgG1が高値であること。2.HVG病の主として肝病変とIgE値に相関性があること。3.抗IL-4抗体によってHVG病が抑制出来ること、が判明しこれはHVG病にはIL-4が深く関与していることを意味する。 TNF-αは慢性炎症性疾患や自己免疫病に関与する重要なサイトカインとして知られるがGVHD,VOD,間質性肺炎等の細胞移植合併症の際にも重要なサイトカインの一つである。近年、TNF-αのプロセッシングインヒビターであるメタロプロテナーゼインヒビター(MPI)がマウスの実験系において致死的エンドトキシンショックを予防するという画期的な報告がなされた 我々はマウス急性GVHDの実験でMPIが血中のTNF-α量を減少させてGVHD病変を改善し、かつ生存率を著しく延長させることが判明した。このMPIは膜型TNF-αから分泌型TNF-αへのプロセッシングを抑制するだけでなく膜型FasLから分泌型FasLへのプロセッシングを阻止することが明らかとなった。またにSLE患者の血中では1.sFasL濃度が上昇していること。 2.Fas/FasL結合の抑制により末梢血トレランスの破錠するなど自己免疫病の発症にFas/FasLシステムが重要であること、が判明した。 これらの結果は臓器アレルギーに基づく血液悪性疾患のGVH,HVGD様膠原病のみならず移植治療における病態、治療の進歩に貢献するものである。
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