慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病は難治性の全身性自己免疫疾患である。以前に我々は全身性エリテマトーデス患者末梢血や腎臓で非常に強いオリゴクローナルなT細胞の増殖が認められること、慢性関節リウマチにおいても特定のT細胞がオリゴクローナルに滑膜に集積していることなどを報告してきた。これらから、この増殖T細胞クローンの抗原を同定することが膠原病病因解析、ひいては抗原特異的治療法の開発につながると考えられ、本研究では抗原性未知のT細胞の抗原を同定する方法の確立を目的とした。そのためにMHC分子付ペプチドライブラリーをファージを用いて作成し、同様に1個のT細胞からクローニングした再構築T細胞受容体を用いてスクリーニングする可能性を検討した。具体的にはヒト・及びマウスのMHCのクラスI分子としてHLA B5lOl分子、H-2Dbをヒトβ2-マイクログロブリン遺伝子と共にファージ上に発現させ、これが実際に抗原ペプチドを結合することを証明した。また、患者検体から集積T細胞のTCRα鎖とβ鎖の遺伝子を、細胞を株化すること無しにペアでクローニングでき、大腸菌で1本鎖TCRとして発現できることを発見した。ランダムペプチドMHCファージライブラリーの構築が可能であると考えられた。今後のライブラリーの作成と実際のスクリーニングにより自己免疫疾患患者で病因論的治療的意義をもつT細胞の抗原の同定に役立つと考えられる。
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