研究概要 |
膠原病の代表疾患としてSjogren症候群(SS)を取り上げ、以前われわれが見いだした3種類の末梢血樹状細胞(fraction 1,2,3 DC)の変化につき、11例のSS患者群と8人の正常対照群で比較検討した。fraction 1,2,3 DCにおけるCD40,CD80,CD83,CD86,およびHLA-DRの発現強度は両群間で差異を認めなかった。一方、SS患者群では対照群に比し、total DCの絶対数が有意に低下していた。これはSS患者群におけるfraction 1 DC(CD1a+,CD11c+)の絶対数の選択的な減少に基づくことが明らかにされた。患者口唇唾液腺の生検標本の免疫組織染色では、fascin+,HLA-DR+単核球の浸潤が腺管周囲に多数認められ、これらの浸潤細胞はその表面形質からDCであることが示された。すなわち、SS患者における末梢血中のfraction 1 DCの減少は腺組織への選択的な動員による可能性が示された。末梢血CD4+T細胞におけるIFN-γとIL-4の細胞内二重染色によると、IFN-γ陽性細胞が患者群で有意に増加しており、SS患者ではすくなくとも末梢血においてTh1優位のバランスが存在することが示唆された。また、fraction 1 DCとアロのナイーブT細胞(CD4+,CD45RO-)をin vitroで共培養するとIFN-γ産生細胞が増加することが明らかとなった。すなわち、SS患者におけるTh1優位のバランスはナイーブT細胞が積極的に動員されたfraction 1 DCと接触することにより生じることが示唆された。以上の結果から、fraction 1 DCが選択的に局所腺組織に動員されることによりTh1優位のバランスが誘導されることが示唆され、SSの発症あるいはその病態と密接に関わる新しい機構として興味深い。
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