研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)は、関節滑膜をその病変の主座とする慢性持続性、且つ進行性破壊性の炎症疾患であり、滑膜細胞は、滑膜炎症の進展・遷延化において中心的な役割を担う。本年度は、ICAM-1の発現の相違により、細胞周期に着目してRA滑膜細胞の機能特性を解明した。RA患者滑膜細胞の細胞表面抗原を解析した結果、ICAM-1高発現(ICAM-1^<high>)細胞から低発現(ICAM-1^<low>)細胞まで幅広く分布した。そこで、滑膜細胞をICAM-1抗体結合ビーズを用いてICAM-1^<igh>、及びICAM-1^<low>滑膜細胞に亜分類し、各々の細胞画分の機能的特性の差異を解析した。ICAM-1^<high>滑膜細胞は、ICAM-1^<low>滑膜細胞に比しTNF-α高産生性で、VCAM-1,CD80,CD86を高発現した。しかし、ICAM-1^<high>滑膜細胞は、ICAM-1^<low>滑膜細胞に比し、殆ど増殖せずに大部分はG_0/G_1期に留まり、p53/p21の増加とCdk6の低下、Cdk6のキナーゼ活性の低下、種々の蛋白質の高度チロシンリン酸化を認めた。また、ICAM-1^<high>滑膜細胞では,Fasの発現増強とBcl-2の発現低下を認めた。これに対して、ICAM-1^<low>滑膜細胞は極めて増殖活性が強く、さらに、ICAM-1^<low>滑膜細胞にIL-1βやTNF-αを添加するとICAM-1^<high>滑膜細胞に分化した。以上、ICAM-1^<high>滑膜細胞は、サイトカイン高産生性、T細胞と高接着性で、RA滑膜炎の病態形成において重要な役割を担う細胞群であるが、p53/p21に誘導されるCdk6等のチロシンリン酸化によって細胞周期の停止に陥っている可能性、及び、ICAM-1^<low>滑膜細胞のICAM-1^<high>滑膜細胞への分化を阻害することのRA滑膜炎制御における重要性が示唆された。
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