研究概要 |
ヒト胃壁細胞の細胞質部分にsyndecan-1の発現がみられ,特にNSAIDsの大量使用による急性出血性潰瘍症例ではほぼすべての壁細胞に強く発現していることを確認した.非刺激下では分泌型の壁細胞は20%程度であること,一部のNSAIDsには壁細胞を静止型から分泌型に変換する作用があることから,syndecan-1の発現は壁細胞の分泌型への形態変化に関与しているものと考えられた. マウスモデルの確立 マウスに経口的にアスピリンを投与し,ヒトNSAIDs潰瘍と同様にsyndecan-1が壁細胞に誘導されるかどうかを調べた. 1.酵素抗体法 1次抗体としてヒト・マウス・ラットsyndecan-1と反応するCD138抗体(RDI-MCD138Nabg)を用いた酵素抗体法を行った.コントロールのマウスでは,syndecan-1は腺窩上皮の細胞膜に発現していたが壁細胞には発現がみられなかった.一方,アスピリン投与群のうち,びらん形成部分で一部のマウスの壁細胞の細胞質にsyndecan-1の発現がみられた.syndecan-1の発現は,腺窩上皮の脱落を伴うびらんを形成したもの,絶食でなく食餌をとらせたうえでアスピリンを投与したマウスで観察された. 2.蛍光抗体法 酵素抗体法で壁細胞にsyndecan-1の発現のみられたマウス胃を用いて,蛍光抗体法と共焦点レーザー顕微鏡によりsyndecan-1の局在を調べた.syndecan-1は拡張したintracellular canaliculi周囲の細胞質部分に発現していた.
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