研究概要 |
我々は、先ずorexin-Aのラット脳室内投与が胃酸分泌を促進させること、及びこの酸分泌刺激が迷走神経切断ん動物で認められないことを見い出しorexin-Aが中枢神経系に作用し、迷走神経を介して胃酸分泌を促進させること、すなわちorexinが脳相刺激胃分泌のトリガー分子である可能性を報告した(Takahashi N et al., BBRC 1999).更に、このorexinの胃酸分泌刺激作用における構造活性相関を検討した。脳室内に合成ペプチドを投与し、その酸分泌に及ぼす影響をみた。投与したペプチドはorexin-A, orexin-A(15-33), [Ala 6, 12]orexin-A, [Ala 7, 14]orexin-A, [Ala 6, 7, 12, 14]orexin-A, orexin-Bである。Orexin-Aはアミノ酸33個からなるペプチドであるが内部に2個のSS(6-12, 7-14)結合を有する。一方orexin-Bは28個のアミノ酸からなりSS結合を有しない。胃酸分泌は生食投与のコントロールに比べてorexin-Aでは有意に増加したが、両方のSS結合を含まないorexin-A(15-33)やorexin-Bには胃酸分泌増加作用はなかった。SS結合をAlaで置換したorexin-A analogueではその胃酸分泌刺激作用はorexin-Aに比べて弱かった。更に、これらorexin-A関連ペプチドの特異的受容体(OX1R, OX2R)に対する結合親和性を検討した。CHO細胞にOX1RまたはOX2R遺伝子を導入し、これらの受容体を発現させた。この細胞に対する各orexin-A関連ペプチドの結合親和性は細胞内[Ca]濃度の上昇を指標にした。OX1Rに対する結合親和性(EC50)はin vivoの酸分泌刺激作用と正の相関をした。一方、OX2Rに対する結合親和性は酸分泌刺激作用と相関しなかった。以上の成績より、orexin-Aは脳内のOX1Rを介して胃酸分泌を促進させること、及びOX1Rを活性化させるに、orexin-AのN末端側の2個のSS結合が重要であることが示唆された
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