研究概要 |
平成11年度は、核局在シグナルを結合させたlκBα cDNAの組み換えアデノウイルスベクター(NLS-lκBα)の作成を試みた。しかしながら、正確な配列のlκBαとSV40 large T抗原cDNAを得ることに難渋した。一方、アデノウィルスへのコンストラクトが組み込み可能かどうかも検討したが、こちらも充分な組み込みが得られず再検討が必要となった。アデノで挿入可能な遺伝子導入は、CAプロモーター付きで5kbまでとされているがlκBαのコンストラクトのサイズが3720bpと大きいため、充分な組み込みが得られなかった。そこで、NF-κBの特異的阻害剤であるPDTC、NACを用いて、in vivoにおけるNF-κBの活性化抑制が、致死性膵炎モデルであるタウロコール酸膵炎(TCA膵炎)ラットやTCA膵炎腹水の上清(PAAF)の軽症膵炎ラット腹腔内への移入モデルで生じる肺障害を軽減するか検討した。PDTC、NACはこれら致死性膵炎モデルの肺障害を軽減し、生存率を著しく改善した。その改善効果はNF-κB活性化の阻害による肺でのTNF-α、IL-1βの産生抑制が一因と考えられた。平成12年度と13年度も引き続き、NLS-lκBα組み換えアデノウィルス作製を継続している。なお、in vivoで認められたNF-κBの抑制による重症膵炎モデルの病態改善の機序を明らかにするため、血管内皮細胞や単球の培養細胞系を用いて、PAAF中にNF-κBを直接活性化し、接着分子やIL-6,IL-8の発現を誘導する因子が存在することを証明した。また、NF-κBの阻害がこれらの発現を抑制することも確認できた。
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