免疫学的機序による胆管炎には、原発性胆汁性肝硬変、肝移植の際に起こる慢性拒絶反応、及び骨髄移植後の移植片対宿主病などがあり、いずれも進行性で終末的には肝不全を呈する疾患である。これらのメカニズムは十分に明らかになっておらず、満足できる治療法はない。特に肝移植後の慢性拒絶反応は、肝移植の再移植必要例の原因の大半を占めており、わが国に移植医療が定着するために、早急に解決されるべき問題である。これらの疾患では肝内胆管上皮細胞が標的となっているが、今までその細胞死のメカニズムは不明であった。近年細胞死の機序としてprogramed cell deathすなわちアポトーシスが提唱され、各種肝疾患での関与も明らかとなった。平成11年度の本研究により、免疫学的機序による胆管炎動物モデルであるGVHD胆管炎モデルを用いることにより、(1)この胆管炎の際に胆管上皮細胞により、Fas抗原が表出されること、(2)Fasリガンドにより、これらの胆管上皮細胞にアポトーシスが誘導されること、(3)Fas/FasLを阻害するキメラ蛋白であるFas-Fcを投与することによりin vitroとin vivo両方の実験系でGVHDの発症が予防されることを明らかにした。また、胆管上皮細胞が、その大きさ・解剖的位置によりheterogeneityを持っていることを明らかにした。また胆汁うつ滞マウスモデルを作成し、そこで起こる胆管上皮細胞の増殖と消失に関与する因子の検討を行なった
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