研究概要 |
胃潰瘍などの胃粘膜障害においては特にその修復過程で様々な増殖因子の発現が関与している。今回は特にHepatocyte Growth Factor(HGF)とTransforming Growth Factorに注目し、この両者をそれぞれメタロチオネインプロモーター下に発現させたtransgenic miceを用い、人為的に胃粘膜障害を誘起してコントロールの差を比較した。両transgenic miceとも胃粘膜でも過剰な量のTGFa,HGFを発現している。 まずHGF mouseでは、transgeneであるHGF自体の発現は前胃、胃体部、前庭部で差はなかった。HGFマウスをネンブタール麻酔下に開腹し、漿膜側から液体窒素冷却した金属プローブによる圧迫冷却法により胃粘膜障害を惹起し障害発生の程度と障害からの回復過程をコントロールマウスと比較した。その結果潰瘍形成自体はtransgenic miceとコントロールの間には差はないが、潰瘍修復過程でtransgenic miceで促進していた。潰瘍の作成は胃体部、前庭部で行い、無処置状態と比し、潰瘍修復過程では病理学的に血管新生の亢進がみられ、northern blotではVascular Endothelial Growth Factor mRNAの発現亢進がみられた。これらのことからHGFは潰瘍形成過程での作用は著明でないが、修復過程ではVEGFの発現、血管新生を介して潰瘍修復を促進している事が示唆された。 さらにTGFa miceを用いて、開腹の必要のない150mM塩酸加60%エタノール100μlを経鼻経食道的に胃内に注入し胃粘膜障害を惹起した。急性期の胃炎自体はコントロールとTGFα transgenic miceではマクロでも病理学的にも差はなく、修復過程でTGFatransgenic mouseが期間が短縮する傾向にあった。現在これらの差をタイムコースで追い、細胞増殖の程度を検索中である。
|