研究概要 |
1)平成11年度は肝疾患患者末梢血中の樹状細胞を解析したが、平成12年度は肝内の樹状細胞を解析し、末梢血のデータと比較した。C型慢性肝炎6例、B型慢性肝炎1例の計7例の肝臓から単核球を分離した。単核球はFL1(FITC):抗CD3、CD14、CD16、CD19、CD20、CD56のcocktail、FL2(PE):抗CD11cあるいはCD123、FL3(PerCP):抗HLA-DR、FL4(APC):抗CD40あるいはCD86の各抗体を用いて染色しFACS Caliburにて4色解析した。なお、FL1陰性で、かつHLA-DR陽性の細胞群をDC-rich分画とし、CD11c^+DCとCD123^+DCに分けて解析した。肝内におけるCD11c^+DC/CD123^+DCの比は症例によってかなり異なるが、一般に末梢血より高く、特に肝炎の活動性が高い例ではその比が高い傾向にあった。一方、進行した肝細胞癌の非腫瘍部では、いずれの樹状細胞も殆ど認められない例があり、肝内における免疫監視機構の低下が示唆された。今後症例数を増やし、肝内Tリンパ球の種類、活性化状態と樹状細胞サブセットがどのように関連しているかを検討してゆく予定である。 2)ヒト肝癌細胞と樹状細胞とのハイブリドーマは、本年度も条件を変えて試みたが樹立できなかった。付着系の細胞(肝癌)と浮遊系の細胞(樹状細胞)との融合は困難であると考えられたが、今後、方法を変えてさらに試みてゆく予定である。 3)SCID-huマウスの作成のために、T、B細胞だけでなくNK細胞機能も欠損しているNOD/SCIDマウスを用いて種々の細胞数のヒト末梢血単核球移入を行った。その結果、移入する細胞数が多い程単核球の生着率が上がり、1x10^8個の末梢血単核球移入2週間後においては、マウス末梢血単核球の60%がCD45RO^+のヒトリンパ球であり、その大部分がCD3^+T細胞であった。また、CD19^+Bリンパ球を2%程度認め、ヒト免疫グロブリン(IgG,IgM,IgA)も血清中に検出されたことより、T、B両細胞が再構築され、4〜5週にわたって維持されることが明らかとなったが、樹状細胞を用いた免疫の試みは成功していない。
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