【背景】Wilson病は銅代謝異常により肝臓を含む種々の臓器障害をもたらす常染色体劣性遺伝性疾患であり、近年その原因遺伝子ATR7Bgeneが同定された。【目的】本邦Wilson病患者におけるATP7Bgeneの遺伝子変異の解析を行うとともに、genotype-phenotype関連につき検討を行う。【対象】49Wilson病患者を含む血縁のない42家系を対象とした。【方法】患者末梢血よりDNAを抽出し、各exonをPCR法により増幅し、SSCP法にてスクリーニングし、direct sequence法にて変異を確定した。また臨床症状、CP値等につき比較検討した。【結果】1)9種の新しい変異を含む21種の変異を同定した。特に2871delC、1708-5T→Gはそれぞれ14.3%、11.3%と比較的高頻度に認められ、2871delCは東日本に、1708-5T→Gは西日本で多く認められた。2)2871delC、1708-5T→G、Arg778Leuのhomozygoteでgenotype-phenotypeは同一家系内では類似しているものの、異なる家系でな全く異なる臨床型を示した。3)heterozygoteにおいても28.6%がCP血症を、35.0%が低銅血症を示した。【考察】1)邦人Wilson病患者の遺伝子解析にあたっては、短時間で解析可能でかつ高頻度に認められる2871delC、1708-5T→G、Arg778Leuをまず検討するべきであると考えられた。2)現時点ではgenotype-phenotypeが関連する変異は認められなかった。3)heterozygoteでも高頻度にCP値等が異常値を示したことは、家族調査を行う上で留意すべきと考えられた。
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