研究概要 |
膵癌・肝癌に対するアンチセンス療法の可能性を追求するため、腫瘍選択性の向上を目指して研究を行った。 1.膵癌におけるK-ras,DPC4,p53,cyclin Aに関する検討および肝癌におけるその発癌に対するカフェインの抑制効果に関する検討について論文発表した。Rasシグナル経路に関与する遺伝子を標的とするアンチセンス療法を含む遺伝子治療の構築は、今後も検討して行く価値のあるものと考える。 2.これまでに行ってきた研究と文献的に蓄積された知見に基づいて、腫瘍新生血管内皮細胞および腫瘍細胞そのものを標的とし、繰り返しの全身投与を前提としたプラスミドまたはオリゴ核酸の担体としての腫瘍指向性ペプチドベクターCRGDCF(K[H-]KKK)6を考案開発した(腫瘍指向性ペプチドベクターとして科学技術振興事業団より平成12年有用特許出願)。これは、環状のRGDモチーフを結合したヒスチジンを側鎖に有するポリリジンで、腫瘍組織に集合し細胞に取り込まれた後にエンドソームからのプラスミドまたはオリゴ核酸の遊離が促進される機能を想定しており、膵癌・肝癌細胞株を用いたルシフエラーゼ発現プラスミドをリポーターとした実験で、腫瘍指向性ベクターとしての可能性を示唆する成績が得られた(第3回米国遺伝子治療学会および第9回癌遺伝子治療国際会議において発表)。仮に、有効な腫瘍指向性ベクターが開発されたとしても、大多数の癌細胞に治療遺伝子を導入することは現実的ではなく、繰り返し投与や治療効果が周囲癌細胞に波及することが望ましい。そこで、アンチセンス療法に加え、この腫瘍指向性ペプチドベクターと新たなRNA interferenceの概念を利用した進行膵癌・肝癌に対する非ウイルス性遺伝子治療を提案する。
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