感染ウイルスの増殖抑制、排除には細胞性免疫応答が重要である。そこで本研究では我々はHCVに対する細胞障害性T細胞(CTL)を誘導するワクチンの基礎的研究をおこない、その有用性をマウスモデルで検討することとした。本年度においてはCTL誘導型ワクチンの開発に重点を置いて研究を進めた。その結果以下のような成績を得た。1.HCVcDNAを用いたワクチンではウイルス蛋白の発現効率が重要となる。そこで我々はelongation factor 1-α (EF1-α)のpromoterを用いたplasmid vectorを用いて、汎用されているCMVのpromoterと比較検討した。その結果、CMVでは3回の免疫が必要であったのに対し、EF1-αでは単回の筋肉内接種でHCV特異的CTLが誘導できた(Vaccine1999.18.675-680)。2.抗原エピトープペプチドを用いたワクチンでは、細胞内にペプチドを導入する必要があり、我々はelectroporaiton法を用いて筋肉細胞に抗原ペプチドを発現させアジュバントを使用せずにCTLを誘導した。さらにB7-1あるいはimmunostimulatory sequence(CpG motif)の発現ベクターを同時に筋肉内接種し、より効率的にCTLを誘導した(投稿中)。3.HCVのCTL-epitopeをBCGに組み込みマウス腹腔内に投与しCTLを誘導した。さらにこのマウスにHCV組み込みvaccinia virusを投与し卵巣でのvirus titerの著明な減少を認めた(投稿中)。4.我々はマウスの肝臓に直接HCV構造蛋白の発現ベクターをelectroporaitonで導入し、CTLが誘導される感染モデルを作製したが(投稿中)、されに発現効率のよい感染モデルを作製しており、平成12年度は本年度作製したワクチンの有用性を明らかにする予定である。
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