本研究では下記の点を明らかにした。 (1)ギルバート症候群の患者に抗癌剤の1種であるイリノテカンを投与すると難治性重症下痢が出現し、この薬はUGT1A1で代謝されると米国で発表されている。本研究では報告と異なり、UGT1A1とUGT1A6にイリノテカンの代謝活性がないことを確認した。イリノテカンがどのグルクロン酸転移酵素アイソフォームで代謝されるか現在、実験を継続している。 (2)白血病の患者で抗癌剤を投与すると非抱合型の高ビリルビン血症を呈することがある。本研究でG71Rのグルクロン酸転移酵素遺伝子多型をもつ場合に、肝機能が正常にもかかわらず、軽度の非抱合型の高ビリルビン血症を引き起こすことを明らかにし、報告した(研究成果・雑誌論文)。 (3)抗糖尿病薬がグルクロン酸転移酵素(UGT1A6)活性を阻害することを培養細胞を用いた遺伝子発現系で明らかにした。UGT1A6活性が低下する多型をもつ患者が、複数の薬剤を同時に服用する場合と薬剤性肝障害が出現する危険性を指摘した(研究成果・雑誌論文)。 (4)滋賀医科大学の倫理委員会からUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子多型研究の申請許可を受け、現在までに健常者100人のDNAサンプルを調整した。さらに100人のサンプルを集める予定である。UGT1A1、UGT1A3、UGT1A6、UGT1A9、UGT1A10の日本人の遺伝子多型の解析は現在進行中である。 (5)変成ゲル電気泳動システムをもちいてグルクロン酸転移酵素遺伝子多型の簡便な検出システムを確立するための検討を行ってきたが、技術的に不安定な部分があり、より、DNAチップを用いた方法が将来性があることが判明した。方針を変更して、現在、特別注文のチップを作成中である。
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