研究課題/領域番号 |
11670497
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 直生志 京都大学, 医学研究科, 教務職員 (60281755)
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研究分担者 |
荒井 宏司 近畿大学, 医学部, 講師 (00263088)
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キーワード | 肝細胞癌 / RB経路 / p53経路 / RB遺伝子 / サイクリンD1遺伝子 / p16^<INK4A>遺伝子 / 分化度 / 細胞周期 |
研究概要 |
RB経路分子は細胞周期制御の中心的役割に関わっている。そこで、肝発癌初期にRB経路の破綻が関与する可能性を考え、各分化度のヒト肝癌を用いてRB経路分子の異常を包括的に解析した。 各分子異常の解析は、従来より腫瘍の解析に用いられ、異常が検出されている方法に基づいた。すなわち、RB蛋白発現には免疫組織化学染色、サイクリンD1遺伝子異常・発現の解析にサザンブロッティングおよび免疫組織化学染色、p16^<INK4A>遺伝子異常・発現異常の解析にはメチル化特異的PCR、PCR-SSCP、PCRを用いた欠失の解析、免疫沈降-ウエスタンブロッティングを施行した。また同一症例において、p53遺伝子異常・発現異常をPCR-SSCP、免疫組織化学染色を用い解析した。 以前に我々は、RB、サイクリンD1、p16^<INK4A>遺伝子のゲノム異常の頻度が高くない事を報告している。しかし、RB経路蛋白の発現異常は、RB発現低下が40%、サイクリンD1の発現過剰が23%、p16発現低下が59%と比較的高率であった。サイクリンD1発現過剰は高〜中分化肝癌に移行する過程で頻度が増える傾向が認められたが、RB、p16発現異常の頻度と分化度には関連は認められなかった。さらにRB経路分子のいずれかに発現異常が認められる症例は82.5%と高率であり、高分化肝癌にも高頻度であった。また、p16発現異常が認められた肝癌ではRB発現が保たれる傾向が認められた。一方、p53遺伝子異常・発現異常は、高〜中分化肝癌に移行する過程で頻度が増加していた。以上よりRB経路異常は、p53異常とは異なり、肝発癌早期に関わる可能性が示唆された。 近年、RB経路の不活化およびテロメラーゼ活性化でヒト上皮細胞を不死化できること、p53経路異常はこの現象に関与しないことが報告されている。ヒト肝癌においては高分化肝癌の時期より高率にテロメラーゼ活性が検出されることが知られており、RB経路分子異常が肝発癌早期に関わるという事実は肝発癌機序を考える上で興味深いと思われる。
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