研究概要 |
脂肪細胞の分化に重要な役割をはたす核内受容体、PPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)γは消化管上皮細胞にも発現していることが知られている。本研究の目的はPPARγの消化管上皮細胞の分化、増殖、アポトーシスおける役割を明らかにし、PPARγリガンドによる胃癌、大腸癌治療の可能性を検討することである。 1.PPARγを高発現する大腸癌細胞株HT-29において、PPARγの活性化はG1 arrestをきたし、分化マーカーであるIAPならびにvillin遺伝子の発現を誘導した。 2.PPARγの活性化により、消化器癌の増殖進展に重要な役割を果たすことが知られているc-metチロシンキナーゼの発現が転写レベルで抑制されることを明らかにした。 3.ラット小腸クリプト由来細胞株IEC-6に変位型rasならびにPPARγcDNAをcotransfectionし、変異型rasならびにPPARγを過剰発現する細胞株IECPR82を作成した。この細胞においてPPARγ活性化は細胞の増殖を著明に抑制し、分化マーカーを誘導した。 4.さらにPPARγの活性化は、Rasにより発現が増強することが知られている様々な遺伝子HB-EGF,amphiregulin,cyclin D1の発現を抑制し、この抑制機序として転写因子AP-1,Etsの活性化抑制が重要であることを明らかにした。 5.以上PPARγの活性化はRas/Raf/MAPKカスケードの抑制を介して消化器発癌に抑制的に作用することを明らかにした。
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