NSYマウスは我々がすでに確立した2型糖尿病モデルマウスで、同時に脂肪肝を時間依存的に高率に発症する。本研究では疾患モデルとしてNSYマウス、コントロールとしてC3H/Heマウスを用いて、我々が開発したPCRを用いたサブトラクションクローニング法にて脂肪肝に特異的に発現が増加あるいは減少している遺伝子を単離した。また、従来の我々の方法では、PCRを用いるため増幅にsize fractionのバイアスがかかるのを防ぐため、制限酵素BamHIで切断したcDNAをtemplateとして実験に供したが、BamHIフラグメントのみの解析ではfalse negativeが生ずる可能性がある。そこで今回はBamHIとは認識配列が異なるHindIII切断によるcDNAフラグメントの解析も行なった。その結果、BamHIフラグメントの解析では、NSYマウスの肝臓で発現が増出している遺伝子として、3個の独立したクローンが得られた。既知遺伝子としてglurucuronyosyltransferase、1つはhuman ESTとhomologyがあり、1つは既知遺伝子とhomologyを認めなかった。逆に、NSYマウスの肝臓で発現が抑制されている遺伝子として4個の独立したクローンが得られた。既知遺伝子としてTFII-1、DBPLA、collagen type IV、あと1つは既知遺伝子とhomologyを認めなかった。Hind IIIフラグメントの解析では、NSYマウスの肝臓で発現が増加している遺伝子として、3個の独立したクローンが得られたが、いずれも既知の遺伝子とhomologyを認めなかった。NSYマウスの肝臓で発現が抑制されている遺伝子として、novel Ser/Thr phosphatase、HMG CoA reductase、translation initiation factor、IAP、また、1つは既知遺伝子とhomologyを認めなかった。 以上、脂肪肝にて発現が増減している遺伝子を単離同定した。現在、我々は、NSYマウスとC3H/Heマウスとの交配実験から脂肪肝発症遺伝子座を同定しつつあり、今回単離した遺伝子群とそれらの遺伝子座との照合により、新たに脂肪肝発症遺伝子が同定されるものと考えている。
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