肝幹細胞(oval cell)出現のモデルとして、アセチルアミノフルオレン(AAF)投与後に70%部分肝切除(PH)を加えるSolt-Farberモデルを用いた。すなわち、除放性のAAFを皮下投与し、成熟肝細胞の増殖を抑制し、7日後にPHを施行し、oval cellの出現を誘導した。直後にアデノウイルスベクターに組み込んだHGFcDNA遺伝子(pAxCAHGF)を尾静脈より投与した群(I群)と投与しない群(II群)で、投与4日後、7日後、9日後、13日後でoval cellの増殖を検討した。pAxCAHGFはアデノウイルスのE1、E3を欠如させた非増殖性のウイルスベクターに、比較的広範な細胞で発現するCAGプロモーターの制御下にラットHGFcDNAを挿入した遺伝子である。。pAxCAHGFを導入すると(I群)、投与後4日をピークに肝臓でのHGF mRNA発現が増加した。IIではHGF遺伝子の発現はほとんど認めなかった。予備実験として、HGFcDNAをLacZcDNAへ置換したpAxCALacZを導入し、β-galactosidaseの発現を検討すると、β-galactosidaseはoval cell近傍の肝細胞で発現していた。oval cellは両群でPH4日後より出現し、徐々に増加し、9日をピークに増加した。I群ではII群に比較し、oval cellの絶対数が有意に増加した。また、S期にあるPCNA陽性oval cellもIで有意に増加した。この際、oval cellの増殖を促進する増殖因子であるSCFがI群でII群に比較し、有意に増加し、SCFのリセプターであるc-kitの発現も増加していた。SCFとc-kitはoval cellで発現しており、oval cell上でSCF/c-kitがオートクリンに作動していることが示された。以上より、肝臓へのHGF遺伝子導入がoval cellの増殖を促し、肝再生へ重要な役割を担っていることが示唆された。
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