研究概要 |
本年度の研究では以下のことが明らかになった. (1)ラットにブタ血清を週2回投与すると8週後には,肝細胞壊死-再生を伴わず,活性化星細胞の出現とともに肝線維化が誘導されるが前癌性病変は発現しない. (2)活性化星細胞により形成された肝硬変をへて前癌性病変(酵素変異細胞)-肝発癌に至るラットコリン欠乏食においては,これらの前癌性病変の多くは,活性化星細胞によりとりかこまれている. (3)コリン欠乏アミノ酸置換食とブタ血清を同時投与したところ,コリン欠乏アミノ酸置換食単独群に比べ,肝細胞壊死-再生は両群で変化がないが,活性化星細胞の数-線維化-前癌性病変は,ブタ血清同時投与群で有意に増加していた. 以上の結果より,活性化星細胞の数-線維化-前癌性病変は,細胞壊死-再生とは別に密接に関連していることが判明した. 肝細胞癌の大半は肝硬変(線維肝)を母地として発生し,この肝線維化の主細胞は星(伊東)細胞であることが知られている.近年この活性化星細胞にはコラーゲン合成以外に,HGFを初めとする増殖促進因子やTGF-βなどの増殖抑制因子の産生や,コラーゲンを分解し癌細胞の転移に関連するMetalloproteinase(MMP)群を産生することが明らかにされている.また,肝細胞癌の中には皮膜で被われたものが存在し,皮膜の形成にも活性化星細胞が主役であることが報告されている. 本年度の研究成果はこのようなことの解明の一助になると考えられる.
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