研究概要 |
脂質過酸化反応を含む一連の酸化ストレスは肝障害機序の一つとして重要である。一方、Disse腔も局在する肝星細胞は肝障害時におけるコラーゲン産生細胞として肝線維化の中心的な役割を担っている。我々はこれまでに、肝線維化の初期過程においてコラーゲン沈着に先行して肝の過酸化脂質産物(MDA)濃度が増加すること(Shiba M,Shimizu I,et al.Liver,1998)、抗酸化活性を有するビタミンAが星細胞の酸化ストレスを抑制し、肝線維化の予防と治療効果を発揮すること(Mizobuchi Y,Shimizu I,et al.J.Hepatol,1998)を見いだしている。今回、肝線維化モデルにおいて肝コラーゲン濃度や星細胞活性化マーカーであるα-平滑筋アクチン(α-SMA)発現増強と共に肝内MDA濃度上昇、生体防御酵素であるSODやGlutathione peroxidase(GPx)レベルの低下を認めた。さらに、単離星細胞の活性化は酸化ストレス反応を亢進させコラーゲン産生とα-SMA発現を増強し、同時に、SODやGPxレベルを低下させた。酸化ストレス誘導下の単離肝細胞では培地中のLDH濃度上昇と共に、細胞内MDA上昇とSODやGPxレベルの低下を認めた。そして、MDAそのものが単離星細胞を活性化することを明らかにできた。これらの所見は酸化ストレスにより生じた障害肝細胞自体のMDAが、直接、肝星細胞を活性化して肝線維化を誘導する可能性を示唆し、同時に、酸化ストレスに対する生体内防御機能の重要性を示唆するものと考えられた。
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